ビギナーにも、ディープなマニアにも、超オススメ!
生豆を選んですぐ目の前で焙煎してくれる珈琲豆専門店。
豆工房コーヒーロースト大島中の橋(大島7-2-2)
ブラジルショコラ(1080円)
天空農園(1380円)
焙煎業者によって大型機で大量に焙煎された珈琲豆が流通するのが当たり前だった1990年代に、生豆を店頭に並べてお客の好みを聞きながら個別に焙煎するお店を始めたのは、元商社の生豆担当の若者でした。一号店は武蔵小杉駅前の5坪の小さなお店「豆工房コーヒーロースト」。今や「豆工房コーヒーロースト・グループ」は2018年4月時点で全国に121店舗を展開するチェーン店となっています。
店内に入ると、現時点ではまだ感染症対策のためにお店の奥には入ることが出来ず、入り口付近でオーダーする形になりました。店内に入って左手には様々な種類の生豆が並んでいて圧倒されます。
コーヒーロースト大島中の橋店はフランチャイジーで、お店のオーナーさんは上海出身のトニー(Tony)さん。珈琲関連のことを尋ねると、どんなことでも的確な回答が返ってくるスペシャリストです。お店にはもう一人、優秀なお弟子さんが働いているとのこと。
さて、珈琲ビギナーには「どんな豆をお探しですか?」という質問が、実は一番困りますよね。自分の味覚嗅覚に自信を持っている人なんかなかなかいないし、どんなワードを使えばいいのかわからず、しどろもどろになりがち。でもご安心ください。優しいトニーさんの質問にひとつひとつ答えて行けば、きっと理想の珈琲豆にたどり着けます。
私がここ最近探している珈琲豆は、アイスコーヒー用に酸味が極力少なく、微かな甘味があり、コクはありつつ苦味抑えめ、というもので、さらに、ホットにしてもおいしければ尚最高、というワガママオーダー。「なるほど…では、アイス、ホット、どちらの頻度が高いですか?」とトニーさん。ああ、やはりそこに分かれ目があるのだなあ、と思いつつ、アイス重視であることを伝えます。
最初に勧められたのはお店の人気ナンバーワンである南米ブラジル産「ブラジルショコラ」(1080円)。もちろん即決。「ローストはシティロースト(中深煎り)をオススメします」と言われて、それも即決。アイス重視ならフルシティでも良いのですが、出来ればコクも欲しいというオーダーに対応した感じですね。良き。
そして、他のオススメは、と聞くと「今、とても珍しい豆が入っています」と中国雲南省産「天空農園」を勧められました。こちらの豆は先程のオーダー内容にも合致するとのことで、こちらも即決購入。まだまだビギナーなので中国産の珈琲豆なんて見たことありません。これは非常に楽しみ。ああ、またダブル購入してしまった。
さて、めっちゃ楽しみドキドキワクワクの焙煎工程です。
生豆を掬い、コーヒーロースターの中にイン。あとはトニーさんの火加減と手加減次第。
このロースターは豆工房コーヒーローストのオリジナルロースターで、熱風で回転するガス式です。下のコンロは家庭用、と教えてもらいました。なるほど。シャリンシャリンとロースターが回転する心地よい音が店内に響き、しばらくすると芳醇な煙が立ち始めます。
良き所でロースターから豆を浅型バットンに移します。作業台の手前にダクト付きの吸引溝があって、そこで一旦冷却。
その後、おもむろにバットンを上下に振って豆を空中に何度も放り上げ、ロースト後に出た破片や不純物などを飛び散らせます。お米を精米するときの「風選」と似たような工程ですね。こんな作業、初めて見ました。大型焙煎機であれば自動で出来るそうです。最後にアルミの保存袋にザザっと入れて出来上がり。
「基本的な酸味や苦味の程度は、焙煎後の豆をそのまま食べれば分かります」と焙煎されたコーヒー豆を一粒くれたのでカリカリ食べてみました。焙煎出来立てめちゃうまい!酸味も少なそう!素晴らしい!
作業中にも色々なお話をお伺いして、めちゃ勉強になりました。少し深い話になりそうになると「ここから先は本当に色々あります」というセリフがトニーさんの口から何度も出てきて、ここから沼の入り口になるが準備はよろしいか、という感じでとても刺激的。
お会計の時に「知っておきたい、コーヒー教室」と「美味しいアイスコーヒーの作り方」という紙をもらいました。「美味しいアイスコーヒーの作り方」に「簡単ドリップアイス」と書かれていますが、全然簡単そうじゃないのが素晴らしい。「ホイッパーで泡立て泡の中に香りを閉じ込めて出来上がり」の部分とか、とてもよろしいですね。ここに置いておきますね。
最後に、店内に並んでいる生豆にはすべて産地などが書かれたポップが付いているのですが、横型ポップは定番モノで、縦型ポップは無くなったら次は入手できるかすらわからない希少豆で、都度、仕入れる豆は異なる、ということを教えてもらいました。
「ですので、これで、しばらく、楽しめますね」と、トニーさん。
そのとき、白いマスクに隠されて見えるはずがないのに、深い珈琲色の沼のようなトニーさんの微笑みを、確かに私は見たような気がしたのです。どっぺんぱらり。